【粉飾決算】「インネクスト(札幌アンビシャス)」の粉飾は見抜けなかったのか?~同社の粉飾を見抜く3つのポイント~


久々に強烈な粉飾決算の発表がありました。

不正経理及び第三者調査委員会設置に関するお知らせ(インネクストウェブサイト)

要約しますと、平成19年6月期から平成23年6月期第三四半期までにおいて、循環取引及び売上の前倒しを行った上に架空売上まで計上しているという非常にシンプルな粉飾決算でございます。

インネクストという会社は平成19年2月に札幌アンビシャスに上場した会社で、液晶パネル検査装置の開発・製造・販売を行なっております。当時札幌証券取引所も福岡や名古屋同様新興市場の拡大に注力しており、その中で上場いたしました。

同社発表の業績としては、 平成20年6月期こそ発注見送り等で大幅に悪化したものの(実はこの大幅に悪化したのがミソだったりします)、その後は損益計算書上では非常に堅調に業績を伸ばしておりました。

ところが・・・。
平成23年6月17日の夜に同社が発表した開示資料によって大きく事実と異なる決算を発表していたことが明らかとなりました。

同社発表の4年9ヶ月における売上高は総額51億2,203万円、当期純損失は累計9,687万円(平成20年6月期に2億超の損失を計上)でしたが、そのうち、23億9,932万円の架空売上と3億460万円の売上前倒しを行い、10億6,394万円もの架空利益を計上しておりました。

つまり実態は、4年9ヶ月における売上高は27億2,271万円、当期純損失は11億6,081万円という悲惨な業績の会社だったということになります。

当然のことながら、札幌証券取引所はインネクスト社を監理銘柄(審査中)に指定し、審査の結果によっては上場廃止に該当する可能性があることを告知いたしました。まぁこの内容ですと正直厳しいだろうなと言うのが本音です。

ここからが本題になりますが、そもそも同社の粉飾というのは事前に判別出来なかったのか。
この部分について倒産研究を行なっている僕自身がご説明したいと思います。

一応、簡単な資料は作っておりますので、自身で加工するのもそんなに難しいものでもありませんので、作られても良いとは思いますが、 公表できる範囲で作成したものをPDF化しておきますので、ご参考下さい。

インネクスト簡易分析データ

それでは、こちらの資料からご説明してみたいと思います。

1.利益と営業活動によるキャッシュ・フローのギャップに注目
インネクスト社の当期純利益は4年9ヶ月の間で3期は黒字で2期は赤字という結果でしたが、営業活動によるキャッシュ・フローは全ての期間でマイナスでした。実際黒字であっても売掛金の回収サイクル等によってマイナスになることはありますが、黒字が継続されている中で営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続されているのは危険です。

というのが、 営業活動によるキャッシュ・フローとは本業における現金の増減を表すものですが、基本利益が計上されていて、更にここがプラスになることが健全な会社の証拠となります。
例えば、同社の場合、税引前当期純利益はプラスにも関わらず営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスが継続されておりますが、その大きな理由の一つは「売掛債権の増加」だったりします。

これは何を意味するかと言うと、売上が計上される反面売掛金が計上される。それにも関わらず売掛金が回収できないとなると売上と利益は計上されるけど、売掛金が回収できないと最終的には損失になる。
特に、同社の場合、売上の割にどんどん売掛金が増大しており、最終的には年間売上(正確には9ヶ月間の売上)と同額の売掛金が計上されており、実情としてまともに回収出来ていない可能性もここで見て取ることができます。粉飾でなくてもこれは危険。

後は有価証券報告書では売掛金や販売実績で多くの実績(売上高の10%以上)のある会社は明記するルールになっておりますので、そのへんを見ておくと回収できているかは判ります。売上がその期に計上されていなさそうなのに売掛金が残っているところや売上よりも多くの売掛金が残っているような会社があるとちょっとイエローシグナルです(同社にもそのような会社はありましたが、そちらは他社のことですので今回につきましては資料を明示しません。でも自分で有価証券報告書を見れば簡単に作れるかと)

また、さほど大きな金額ではありませんが、このように粉飾決算の場合で営業活動によるキャッシュ・フローにマイナスインパクトを与えつつ業績をよく見せる手段としては「たな卸資産の増加」というものです。基本的にたな卸資産を増やすということは費用を資産化することもできるもので、本来不良在庫として償却しなければならないものをそのまま残すことで費用を繰り延べることもございます。業績に伴って在庫が増加するのならまだしも、業績以上のペースで増加するのは少々危険だったりします。

このように利益と現金の増減。特に「営業活動によるキャッシュ・フロー」の内訳を見ることによって本来その現金の増減が健全であるかを考えることができます(やっぱり本業によってお金が増えるのは大事!)

2.利益が出ているのに現金が減ってる!
まぁここはキャッシュ・フロー全体にも言えることですが、3期利益が出て、売上が増加しているにも関わらず、同社の現金及び預金はひたすら減少し、上場時には2.5億あった現金が最終的には700万円足らずにまで追い込まれました。事情が明確であるならばまだしも、そうでなければこの状況は非常に危険です。

3.借入急増
本来、同社は現金及び預金の減少よりも速いペースでキャッシュ・フローは悪化しておりました。
その辺は営業活動によるキャッシュ・フローのみならず、投資活動によるキャッシュ・フローからも明確です。
それではどうやって経営をまかなっていたか。

それは、借入を行うことで賄っておりました。

上場いたしますと若干ながら信用が上がるため借入を行いやすくなります。また、当時同社は札幌証券取引所の期待を受けて上場してきたこともあり、 多くの銀行から少しずつ借りるような形だったようです。

同社の場合、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローのマイナスを増資による資金調達と借り入れで賄ってきました。しかし、追加の借入金を行うことが難しくなり、一気に資金ショートに追い込まれたというのが平成23年6月期第三四半期の状況だったのかと思います。
それでも、借換に応じてくれたり、追加で4000万円程度借入金が増えているところを見ると若干の運転資金はこの期に及んでも応じてくれた金融機関があるのかもしれません。

まぁ結論ですが、投資もしていないのに借入金が増える=運転資金の捻出のための借入の可能性が高いのでその会社の貸借対照表もしっかり読み解くことが大事です。

駆け足ではありましたが、同社の開示書類を斜め読みしたレベルでも3つのポイントをお示しすることができました。このように、粉飾決算が疑わしい会社というのはゼロではありません。「風説の流布」の危険性もありますので、この会社が怪しいと現時点で粉飾が発覚していない会社を実名では申し伝えるつもりはございませんが、このような視点で実際にあった事例を元にお伝えしていくことが出来ればと思っております。

長文となりましたが、本日はここまで。
又参考になる事例がございましたら記事を書かさせて頂きたいと思います。

追記
9月9日にインネクストは遂に破産手続申立を行いました。
【結局倒産】インネクスト(札幌アンビシャス)破産手続申立。負債総額10億70百万円

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